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ブルーエゴナク『ラッパー Rapper』感想

 今日はアトリエ劇研へ演劇を観に行った。ブルーエゴナクの『ラッパー Rapper』という作品。久々に面白い作品を観たので感想を書く。「考えさせられる」作品という感じではなかったので、箇条書きで。

 

●役者がみんな上手かった。特に主役の野村明里さんは、第一幕/第二幕の落差にシビれた。第一幕で仏頂面だったのはそういうキャラなのか、それとも地なのか、気になっていた。他の役者(特にしらとりまなさん)はすごい表情の演技がちゃんとしてたので、浮いてるなあと。

 しかし、第二幕になって納得。お婆ちゃんを表す貼りついたスマイルは、まるで阿修羅の顔のようだった。観客は笑ってたけど、僕は鳥肌が立った。

 うめっち(楳山蓮)もすごい第一幕のシリアスなラップとは打って変わり、第二幕では軽快な動き。最後のシーンも迫力があった。

 佐々木峻一さんは前の努力クラブの公演(『ピエロありがとうピエロ』)を観たときに不気味な演技をする人だなと思っていたけど、なるほどそういう人なようだ。今回はすごく役に合っていたと思う。自然ではない動きがヒップホップのダンスをうまいこと戯画化していた。

 

●音響・照明がきっちりキマっててすごい。演劇の音響照明って、どうしても「あ、音響だ/照明だ」ってなって現実に引き戻されるところがあるんだけど、『ラッパー Rapper』では音響であること、照明であることをあまり意識しなかったし、自然に入ってきた。

 

●舞台セットはシンプルなんだけど、マイクのコードの処理をうまいこと使ってて、これは演劇らしい動きだなあ。

 

●第二幕が65年後という設定は思いきった。はじめは笑ってしまったものの、すごくちゃんと成立していた。認知症とかになると先に衰えていく機能と、後になっても残る機能があるというのはよく言われることだと思うが、その意味で言えばラップにおける「バイブス」は、老いてもなお残るものなんだなあと。戦争のような描写が仄めかされていたが、それに対する希望がラップによって見出された。クロノ・トリガーってゲームのA.D.2300年(文明が壊滅した後の未来世界)を思い出した。

 成立していたからこそ正直見入ったし、突然老人が死ぬみたいな描写はむしろちょっと白けてしまった。個人的には要らなかったかなあと思う。アリなんかもしれんけど。

 

●ラップ抜きにしてもシンプルに面白い作品だと思ったが、もちろんラップもカッコ良かった。ラップに対するメタ的な視点も導入しつつ、日常の世界からラップの世界へと滑らかに接続していたのは手堅い。

 それにしても、ラップで言葉を聞くと入ってきかたが全然違う(月並みな感想)。最近、演劇を観ていると「言葉に詰まる」を見たいな、と思ってしまうので、ラップのように流れでスルスル入ってくる言葉を聞くと、それとの対比で「言葉に詰まる」がより映えるなあとか思った。