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「変な男にばかり好かれる女」を知るための10のポイント

togetter.com


 変な男にばかり好かれる女性が話題なようです。

 リンク先の漫画に描かれている「変な男」には「浮気をするクズ男」(僕はよくバンドマン系クズと呼んでいます)と「キモいオタク」(とりわけ「空気が読めず」に特攻してくるタイプ)が描かれています(ひどいけど以下「クズ」、「オタク」と略記します)。*1

 クズとオタク、一見全く正反対です。しかし、この両者に引っかかる女性は根本的に似通っている場合が多いです。それは一言で言えば、自己肯定感が低くて自己主張が苦手なタイプの女性です。

 そういう人はなぜ変な男に好かれる(引っかかる)のでしょうか? 男女論界隈で流行ったキーワードやら専門用語やらを振り回しながら解説していきます。

 

 

フィルタリング篇

 まず、恋愛関係に発展(好きになったり好かれたり)する人間のフィルタリングができていないことが問題です。

 

1.クズ/オタクコミュニティに入ってしまう

 自分に自信を持っている人は自分を大事にするものです。それゆえ、クズの多いコミュニティ(偏見だけど、出会い系とか水とか風とか)は避けるでしょう。

 また、自信があれば(オタクの多い)カーストの低いコミュニティには行くことを恥ずかしいとすら思うでしょう。そこまで思わずとも、コミュニケーションが取りづらくて集団に対して居づらさを感じれば出ていくでしょう。

 しかし、自己肯定感の低い人はそういった場所に居ついてしまい、次の段階に進みます。

 

2.クズ/オタクとコミュニケーションを取ってしまう

 自分に自信のない人は嫌われることを恐れがちです。そのため、八方美人になってしまいます。だからクズやオタクに対しても他の人と同じようにコミュニケーションを取ってしまうのです。

 クズやオタクは往々にして一気に距離を詰めてきたり、まともに一人の人間として扱ってこなかったりします。そこで、ある程度の自己肯定感があればヤバさを感じて、できるだけ避けたり壁を作ったりするようになるものなのですが。

 結果、クズ・オタクに好かれてしまいます。峰なゆか・犬山紙子著『邪道モテ』の言葉を借りて大ざっぱに言えば雑魚モテ(雑魚、すなわち恋愛対象ではない人にモテてしまうこと)をしてしまいます。

 とはいえ、雑魚モテをしてもそれを簡単に突っぱねることができれば問題はありません。それが泥沼化していくのが次の段階です。


泥沼篇

 ここからは「恋愛」が始まります。変な男に「好かれる」だけならまだしも、恋愛関係が始まってしまい泥沼化してしまうのです。なぜクズやオタクのアプローチを拒否できないのでしょう?

 

3.寂しいから飛びついてしまう

 クズやオタクは往々にして一気に距離を詰めてくると言いました。そこで慎重になれればいいのですが、自己肯定感が低い人は承認を得たくて(「恋愛」がしたくて)、分かりやすい愛に安易に飛びついてしまいます。

 別の言い方をすれば彼女は「寂しい」ということです。「寂しさ」と「恋愛感情」とを分けることは難しいものです。二村ヒトシさんの言葉を借りれば「心の穴」です。穴を埋めてくれる「愛」にすがってしまうのです。

 

4.自己主張ができないから断れない

 自信のない人は嫌われるのが恐いと言いました。あるいは漫画にもあったような「どうせ自分なんて」という気持ちもあるでしょう。いずれにせよ、クズやオタクを受け入れてしまいます。

 更に言えば、まともな扱いをされなかったり、罵倒されたり、すぐさま性的な要求をしてきたりなどといったモラハラ*2デートDV(家庭内に限らない親密な関係における暴力)に対しても、自己主張できず受け入れてしまうでしょう。すると次の段階に進みます。


5.「尽くすタイプ」でありたい

 いくら自己肯定感が低い人でも、モラハラを受けているような状況は苦痛です。「苦痛から逃れたい」という認知を「修正」し、苦痛を正当化するようになります(認知的不協和の解消)。健康な人であれば、認知の方を変えずに状況の方を変えるのでしょうが。

 結果、苦痛を正当化するために自分自身を言わば「尽くすタイプ」と規定するようになります。こうなってしまう人は往々にしてマゾヒストですし、共依存*3状態に陥っているでしょう。

 ブログ「妖怪男ウォッチ」のぱぷりこさんは「自己愛モテ女子」が女王陛下→下僕→癒しの聖母の3段階進化を遂げるという興味深い図式を提出していますが、今回の例は下僕→癒しの聖母の進化が起こっていると言えるでしょう。

 「聖母」というメタファーは秀逸です。モラハラをするようなクズによくあるのは「自分は今まで傷ついてきた」と主張するものです。それこそ親との関係が上手くいかなかったことなどを理由に責任転嫁する傾向があります。

 それに対して聖母は「彼だって傷ついてる。私がなんとかしてあげなくちゃ」と、傷つく自分を正当化してしまうわけです。メサイアコンプレック(他者を救うことによって自分の価値を感じたいというコンプレックス)です。*4

 ただ、恋愛関係には別れがつきものですから、たいていこのような悲惨な状況もどこかで終わりがきます。

 しかし、元々の問題は変な男に"ばかり"好かれる女性というものでした。つまり、そのパターンは連鎖・慢性化し、"いつも"ダメ男を掴んでしまうということです(倉田真由美さんの言う「だめんずうぉ~か~」)。「男を見る目がない」「男運が悪い」などとも言われるこのパターンはどこから生じているのでしょうか?


そもそもの価値観篇

 "いつも"変な男に好かれる(引っかかる)というこのパターンは「恋愛観」などの根本的な価値観から生じています(もちろん、上記のような泥沼恋愛を続けることで、根本的な価値観まで変わってしまうこともあるでしょう)。以下で説明しましょう。

 

6.なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか

 これは二村ヒトシさんの本のタイトルです。大ざっぱに言えば、家庭環境等の問題で「自己受容」ができず、「私なんか」を愛する人ではなく、私ではない新しい世界に連れて行ってくれる人に憧れ、好きになってしまうという問題についての本です。

 このように「いつも変な男に引っかかる」問題を二村ヒトシさんだったら「自己受容」や「心の穴」といったキーワードで説明するかと思います。
しかしここでは私なりにもっと納得がいくと自負している説明をします。

 

7.生まれて、すみません。

 と太宰治は書きました。この言葉が象徴するように、自己肯定感の低い人は根源的に「負債」(罪悪感)を抱えているのだと思います。だから、ギブ&テイクで言えば、ギブをし続けなきゃいけない存在なのです。だから、「愛してくれる人」なんて困るわけで、「愛してくれない人」に尽くす方がしっくりくるわけです。

 例を挙げれば、ホストに尽くす女性。「ヒモを飼いたい」という女性。奢られることを拒否する女性。バンドマンに振り回される女性(彼女らは基本的に「被害者」という立場でいられるので、「責任」を負わなくてよいという点で楽になれるのです)。

 彼女らは負債を返済することで生きているのだと思います。「自分を罰したい」という感情もこれに近いでしょうから、自傷行為などもこれで一部は説明できるでしょう。

 

8.古いジェンダー

 上の話はたいてい家庭環境の問題で、愛着障害はしばしば「恋愛障害」に繋がってしまいます。しかし、価値観を作りあげるものはそれだけではありません。案外見逃されがちなのはジェンダー観と恋愛観です。

 まずジェンダー観から言えば、「女性は男性の好みに合わせるべきだ」みたいなものですね。いまどき流行らない考え方ですが、先ほどの「尽くすタイプ」とは関連がありそうです。古い意味で「女らしい」人が変な男に引っかかりやすいというのはありそうです。

 

9.カップル単位の恋愛観

 恋愛観というと人それぞれのように思えますが、もっと根本的な「恋愛とはこういうものだ」という社会通念に実は問題があります。伊田広行さんは『デートDVと恋愛』でデートDVの原因として「カップル単位の恋愛観」を挙げています。列挙しすぎで面白いので以下に列挙しときます。

 

  • 恋愛していないことの劣等化
  • 恋愛の自由の剥奪、二者排他性、一夫一婦制的契約観
  • 二者一体感、相互所有
  • 他者性・境界線・プライバシーの否定
  • 守りと依存の正当化
  • 特別扱い、特別要求の正当化
  • 嫉妬と独占の正当化、自由の制限の正当化
  • 干渉の正当化
  • 別れの否定、別れには同意が必要という考え
  • 結婚に至らない恋愛の劣等化
  • 所有・独占の象徴としてのセックス観
  • 恋愛における性役割前提観
  • 閉鎖的カップル観
  • 個人の自立意識の欠如
  • 他の恋愛観への想像力の欠如

 

 以上まとめれば、恋愛における「束縛」のことでしょう(まとめすぎ)。まあ確かにこれ全部やめれば、変な男には引っかからなさそうです。世の(ドラマなどの)恋愛言説は上記のカップル単位の恋愛観を再生産しているというのも事実でしょう。ただ、これ全部なくしたらそもそも恋愛するのが難しくなりそうですが。

 伊田広行さんは「カップル単位」に対して、「シングル単位」を推奨しています。簡単に言ったら、一人ひとり自由な個人として尊重されるべきってことです。

 

10.じゃあどうすればいいのか

 ということで、変な男に引っかからないようにするためには、基本的には自己肯定感高めて自己主張できるようにするのが大事ですね。

 自己肯定感高めるためには、居場所(ホームベース)を持つとか友だち作るとかこの記事みたいな考え方を学ぶとか病院行くとかカウンセリング行くとかなんだろうなあ。「自己主張」に直接アプローチするんならアサーション・トレーニングとかするのがいいのかなと。知らんけど。*5

 マクロなこと言えば、ジェンダー観やら恋愛観やらを言論活動で変えていくなり、自己肯定感が低い子どもが育たないように子育て環境を整えるなりするべきなんだと思う。なんだそりゃ。

*1:どうでもいいけど、クズ/オタクの二分法はトイアンナ著『恋愛障害』のカテゴリーで言えば「(女性を消費する)加害男子」と「(思い込みが暴力化する)妄想男子」の二分法に近いかと(ただし、トイアンナさんの「妄想男子」はどちらかと言えば奥手な男のイメージだと思われる)。

*2:モラハラとは、モラルハラスメントの略。言葉や態度で精神的に傷つけたり、不安にさせて相手を洗脳し支配する(意のままに動かせる状態に置く)こと。

*3:共依存とは、元々はアルコール依存症の夫に対して、アルコール依存を容認してしまう妻の関係のこと。このとき、妻は「夫に尽くす自分」という役割に「依存」しているため、「共依存」と呼ばれる。転じて、お互いが依存しているカップル関係のことも「共依存」と呼ばれがち。

*4:相手がオタクだったとしても、「聖母」というメタファーはおそらく有効だろう。オタクもまた恋愛関係において自己中心的な態度しか取れないし、恋愛を成り立たせようとすれば母親的な接し方をせざるを得なくなってきそうだし。

*5:ちなみに、自己肯定感が高くてもフィルタリングガバガバな人(誰とでも壁を作らずに接する人)とか自己主張しない人とかもいるんで、そういう場合はまた個別的な対処が必要っぽい。自己肯定感高めるよりかはよっぽど楽だろうけど。