「シェアハウス」に対するイメージの偏りについて

 この記事は

adventar.org

の23日目の記事です。

 

シェアハウス関連の自己紹介

 京都で「オープンシェアハウス サクラ荘」という団体の代表をしているホリィ・センと申します。28歳です。現在シェアハウスは6軒ほど運営しています。

 運営といっても、全部大家さんから賃貸しているだけですし、借りる人もそれぞれの家の代表がやっている感じです。

 じゃあサクラ荘って何をやっているのかっていうと、月1で集まって会議をして、「サクラ荘グループ」全体としてどうしていくかというのを決めている感じです。サークルみたいな感じですね。

 会議で決まったことを元に、パーティを開いたりイベントを開いたりサクラ荘メンバーたちで交流したり、という感じです。

 サクラ荘にはコンセプトがあります。それは、「日本にシェアハウスを根付かせる」「そのために、シェアハウスを増殖させる」ということです。シェアハウスを通じた社会運動です。シェアハウスで世界を(まずは日本を)変えようとしています。

 

「ライフコースとシェアハウス」という問題設定

 というのも、今の日本では“まともな”ライフコースを送るのが難しくなってきているからです。

 1990年代前半ぐらいまでは、学校でちゃんと勉強して、良い会社に入って/良い人と結婚して、家庭を営み、子どもを育てていくというコースがうまくいく人が多かったと思います。しかし、そのコースに乗れない人がどんどん増えてきています。箇条書きするならこんな感じでしょう。

 

  • 正規雇用が広がり、お金を稼ぐのが難しい
  • 未婚化・晩婚化でそもそも家族を作れない
  • 家族の維持も難しい(離婚の増加)
  • お金や時間がなくて子育てにリソースをうまく割けない
  • そのくせ、家事・育児・介護に対する社会的な要求水準は高いままである
  • 家事・育児・介護は未だに「母親」に押しつけられがち

 

 こういった問題の帰結として、僕はとりわけ「孤独」の問題と、「子育て環境の悪化」の問題がヤバいと思っています。もっと言えば、「非モテ」問題や「毒親」問題がヤバいと思っています。

 ヤバいので「シェアハウス」で「結婚以外の同居」を推し進めれば問題解決するんじゃね? と思ってとりあえずシェアハウスを広める活動をやっています。ここ4年ぐらいシェアハウス増殖活動をやってきました。

 しかし、サクラ荘は年齢層がめっちゃ限られてます。18~35歳ぐらいですが、20代半ばに集中しています。いわゆる「若者」ですね。

 “まともな”ライフコースをざっくり、出生学校就職結婚子育て老後 だと考えると、僕らのシェアハウスは結局、学校就職結婚の間にしか入れていない、ということになります(なお、仕事についても、フルタイムの人はあんまりいないです)。

 

「シェアハウス」は若者がやるもの?

 シェアハウスは海外暮らしや寮暮らし、ドラマやテラスハウスなどの影響で広がってきた感じです。だからそもそも「若者文化」なのです。

 ライフコース全体から見ても「一時的な経験」として見られがちで、シェアハウスに住むことを「留学」みたいな感じで捉えている人も多いと思います。実際問題、シェアハウスに住んだ経験でいろいろ得られるものはあったと僕も思っています。人によっては合わなくて割とすぐに退去していくんですが。すぐに退去できるのがむしろ魅力なわけです。

 しかし、「“まともな”ライフコースを送るのが難しくなってきている」という問題意識からすると、シェアハウスを若者専用にしてしまうのはもったいないんじゃないか、となってくるわけです。

 実際に、共同保育をするシングルマザーのシェアハウスや、就活や企業活動を軸に集まるシェアハウス、高齢者が寄り集まっているシェアハウス、あるいは子育て世代も高齢者も混ざった多世代居住(コレクティブハウスといいます)のような実践が一部では行われています。

 本当はシェアハウスにはいろいろポテンシャルがあるんだと思います。しかし、「シェアハウス」という言葉のイメージはそれを裏切ります。

 不動産屋主導で広まっているシェアハウスは「オシャレなライフスタイル」のようなものが中心だと思いますし、世間では「シェアハウス」と聞くと若者的な生活がイメージされるでしょう。

 

もっとたくさんの・様々なシェアハウスを

 僕は様々なシェアハウス実践者と話してきましたが、単なる「若者」のイメージに回収されない人は実のところたくさんいます。シェアハウスに住んでいる人は明るい人も多いですが、ある意味「暗い」というか、人間同士の関係についてとても深く考えたうえでシェアハウスに生活し続けている人も割といます。

 ライフコースの視点で見れば、たしかに結婚してシェアハウスを抜けていく人もたくさんいますが、その一方で離婚した後にシェアハウスに住んでいる、みたいな人も割とよく見かけます。「“まともな”ライフコースを送るのが難しくなった」という問題に対するセーフティネットのような機能を果たしている側面があるわけです。

 「シェアハウス」の「若者」的イメージはこれからも根強く残っていくでしょう。しかしシェアハウスはもっと長いスパンで人生を捉えたときに、若者以外にも必要なものになっていくと思います。僕はその準備の作業をやっていきたい。

 28歳の僕は「若者」ではなくなっていく。具体的には「次の世代」について考えるときです。そういう気持ちを大事にしたいので、5年後ぐらいには里親になることも検討しています。

 僕が年齢を重ねると共に、「シェアハウス」もまた若者以外へと開かれたものにしたいと思っています。だからこそ、これからも僕はシェアハウスを拡大していきますし、個性豊かなシェアハウス実践者たちのことを応援しています。

 これからもよろしくお願いします。