童貞非処女になった話

※この記事は2013年3月7日に書かれた記事です。現在は童貞非処女ではありません。

 

私は昔から根暗な童貞である。
高校時代、同類の友人がいた。
 
お互いに大学生となり、自分は関西に残り、彼は関東に行った。
それからも、Skypeを通じてたまに話していた。
そんなある日の昼ごろ、彼はSkypeで話しかけてきた。
 
 
掘られそうだ
 
 
と。
いわく、ネットゲームで知り合った友人を下宿に泊めたところ、バイセクシャルだったらしい。
夜になると豹変。寝込みを襲ってきたらしい。
 
自分は驚きはしたが、どうせ他人事だと思い、「何事も経験だし、やってみたらいいんじゃないの?」と返した。
そして次の日の昼のチャット。
 
 
【速報】掘られた
 
 
おう。
そうか、掘られたのか。
驚きながらも、詳細を聞いていった。いわく、尻の穴に挿入されて痛かったとのこと。
リアルに「アッー」と言っちゃったそうだ。
フェラもごっくんもしたと言っている。正直言ってちょっと信じられなかった。
 
そしていわく、なんと今もSkypeをしながらヒザに乗ってきたりして、相手の方はずっと勃起しているそうだ。
いったい、どういうことなんだ?
ちょっと前まで自分と同じ根暗だと思っていた友人。自分と同類、仲間だと思っていた童貞。
 
そのとき、自分は「負けた」と思った。
同類だと思っていた友人が突如として次のステージに進んだのだ。
それも、脱童貞といったようなありふれた話ではない。彼は非処女だ。なんと言っても童貞非処女になったのだ。
 
自分と同じだと思っていたものが、実は先に進んでいたときに感じるもの。
それは劣等感だ。
 
そこで、私は友人の相手のことを聞いた。もしよければ紹介してくれないかと。
「なんか、お前には紹介したくない」と一度言われ、すぐにまたあの感覚が襲ってくる。
彼が勝者だからなのか? 恋愛で言うところの独占欲というやつなのか?
 
 
どうにか紹介してもらうに至った自分は顔写真を交換した。
それがまたなんともかわいいのだ。失礼な話だがそこらの女性よりかわいいと思った。
二次元で「ボクっ娘」や「男の娘」等の属性を好んで消費してきた自分からすればなおさらだ。
 
中学時代の同級生にバイセクシャルがいたのだが、思えば彼も中性的だった。
よく分からないが、ホルモンバランスとかが影響しているのかもしれない。
これはいける。いやむしろヤらせてください。
 
彼の一人称は「うち」だった。学校でも友人は女子ばかりらしい。
相手の方も自分とセックスしてくれると言ってくれて、俄然やる気が湧いてきた。
 
それから長い期間が空いた。実際にヤったのは学年も1個上がった後の夏休みだった。
というのも、相手の住んでいる場所は実は遠い。友人の下宿に泊まっていたというのも、たまたま都会に来たというだけの話だった。気軽に来れる位置にはないのだ。
その間も、自分は「男とヤれる」と言いふらしていて、周りからも「いい加減ヤれよ」と言われていた。
そして実際、私はサークルの先輩から『ひとりでできるもん ~オトコのコのためのアナニー入門~』を借りて、ローションで尻穴を開発していた。
友人が挿入されたときに痛かったというのだから準備が必要だと思ったのだ。お風呂で指を入れて試行錯誤している内に力の抜き方が分かった。指2本なら普通に入るようになった。
 
 
彼は京都に行きたいと言っていた。青春18きっぷを勧めるなどして、着々と準備を進めていった。
そしてその日がきた。青春18きっぷを使っていた彼は夜遅くになってから来たのであるが、友人も帰省していたため、最終的には3人で自分の実家に集まった。
彼に会ったとき、内心少し落胆した。写真の写り方を見るに、わざとかわいく見えるように撮ってるなとは思っていたが、実際に会ってみれば、男の見た目だった。
 
しかしまあ、来てもらったからにはヤるしかない。実家にいて1時頃だった。ワンチャンこのまま3Pまであるかと思っていたが、友人は「空気読んで帰るわ」と言った。
空気を読んでいるかどうかは分からなかったが、内心踏みきれないでいたのは事実だ。
3時頃になって眠くなってきた。彼が遠くから来たというのもあったので、一緒にシャワーを浴びることにした。
彼は少し恥ずかしがっているようだったが、自分は家の風呂でシャワーを浴びるだけという感覚なので気軽にすませた。
そして、自分の部屋にはベッドが1つあるだけだったので、ともかく同じベッドに入った。
 
*****
 
彼が言う。「寝るの? 寝るの?」
自分も少し気恥ずかしかったので、照れ隠しに何も言わずに彼の身体に触れた。
彼もそれに反応して触り返してくる。電気の消えた部屋の中で、自分は勃起していた。
 
自分が赤子だったころの母親を除けば、愛撫されるということは初めての感覚だった。
予想以上に感じた。自分は乳首が特に感じるのでそこを触られたり舐められたりしたとき、「声が漏れる」という感覚を初めて味わった。
隣の部屋では両親が寝ているのだが、バレたらどうするんだとは思ったが、漏れるものは仕方なかった。
いつしか、下の方にも手は伸びていった。私は強い刺激に思わず身をこわばらせた。
 
男の方が男性器のどこが気持ち良いか分かるとは聞いていたがなるほど、彼のフェラチオは上手いように思った。
自分はイかなかったが、かねてからのフェラチオを自分もすることにした。
男の見た目とは言え、中性的な印象を受けていた彼も、こっちの方は自分よりも男らしかった。
 
舐めてばかりでも始まらないと思い、早々にくわえ込んだ。ついでに手が空いていたので玉を触った。
しばらく続けていると彼は自分を止めた。至りそうだったのだ。自分は「いや、最後までいこう」と言った。
そして、自分の口の中にそれは出た。自分の部屋でやっている以上、床や布団は極力汚したくなかったというのが本音だ。
精飲は自分ので少しやったことがあったが、他人のでもできた。少しえずいた感じだったが、彼のお茶をもらうと、案外なんということはなかった。
 
 
そして最後は、挿入だ。童貞だとか処女だとか、そういう概念はこの挿入が象徴的に扱われてるからこそ強く意識されてしまうのだと思う。
コンドームなどはなかった。童貞がそんなもの持ってるわけがない。いや、準備しようと思えばできたのだろうが、友人もつけなかったと言っていた。コンドームをつけてしまえばやはり、一生敗北の苦渋を舐め続けることになるのではないかと思った。
もちろん、リスキーだとは思っていた。複数の男とヤっていたらしい彼にはエイズ検査を受けてくれないかと一度お願いしたが、断られた。せっかくのチャンスなのだから機嫌を損ねるわけにもいかなかったのだ。
 
準備していたぺペローションを指に塗り、自分の尻を慣らした。よし、今日も指2本は入る。しかし、彼のは入るだろうか。
彼はそれなりに熟練しているようで、自分が上、彼が下の、騎乗位と言うのだろうか。性知識に疎い自分は正確には知らないが、彼いわくその体勢が一番入れやすいのだという。
そのまま沈んでいった。案外すんなりと入った。友人と違ってほとんど痛いとは感じなかった。そして彼が上下に動く。つられて自分も上下に動く。
直腸に異物が当たる感じがした。前立腺を開発しているわけではないので、気持ち良いとは感じなかったが、面白い感覚だった。上下移動している内に抜けてしまった。
 
――ノリノリで書いている印象を受けるかもしれないが、このときには正直少しうんざりしていた。電気を消して触り合っている当初は興奮して勃起していたものだが、触り合っている内にこいつやっぱり男じゃないか、という感情が芽生えてきたのだ。自分のソレはすっかり萎えていた。
だから、抜けてしまったときも、「まあいいか」と思った。次は自分も挿入してみるかと思った。しかし萎えているのだ。
普段使っているオカズのことなどを考えて、なんとか勃たせたものの、いざ入れようという段階になってやっぱり萎えた。2回ほどやったがやはり萎えてしまう。
こうして自分はノンケだと確信したのであった。好奇心から男と触り合うことはできても、強く男だと意識した途端に性的興奮は冷めてしまうのだ。
 
*****
 
一緒にシャワーを浴びてすぐに寝た。
次の日、京都に行きたいと言っていた彼と、友人と共に3人で京都には行ったものの、特に京都らしいところに行くことはなかった。
しまいには、ゲーセンとかに行く始末。一度ヤってしまって、自分としては彼のことは――Skype上ではあんなに大事に扱っていた彼のことは――どうでもよくなってしまったのだ。
今では自分から彼に話しかけることはない。彼が話しかけてきたらテキトーに対応するという程度だ。
 
余談だが、金策に困っている自分は治験を始めようとしている。その健康診断で、HIV抗体は陰性だと出たのであった。