サークルクラッシュ同好会運営マニュアル

 有力なサークル創設者たちが立て続けにサークル設立のための「教科書」を発表している。書かれている内容は具体的な経験に基づいているのもあり、非常に実践的で役に立つ内容が多い。

 

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 僕も3年前(2016年11月)にサークルクラッシュ同好会会誌第五号で「サークルクラッシュ同好会運営マニュアル」というものを書いた。せっかくなので便乗して貼っておこうと思う(表記を少しだけ修正しました)。

 今読むと、単純に自分がやってきたこととやりたいことを書いているだけだなあという感じだった。

 

サークルクラッシュ同好会運営マニュアル(2016年11月19日発行 サークルクラッシュ同好会会誌 Vol.5所収)

 

 サークルクラッシュ同好会を作って今や五年目になる。最初はネタのつもりでやっていたものが、思えば大きくなったものだ。しかし、その歩みも今や停滞ぎみである。
 その一方で、「サークルクラッシュ同好会関東支部」が今年の初め頃に結成された。「サークルクラッシュ同好会」という一団体に過ぎなかったものが、ある種のミームサークルクラッシュ同好会》として広がっていく。そんな兆しも見え始めているのかもしれない。
 そこで、今回は《サークルクラッシュ同好会》現象の火を絶やさないため、「運営マニュアル」を書く。これを読んだ人が、一人でも《サークルクラッシュ同好会》を始めてくれるならば、望外の喜びである。なお、《サークルクラッシュ同好会》の発展のモデルケースとして、 最後の章では2012年に結成した「サークルクラッシュ同好会」がどういう歴史を歩んできたのかも記しておこう。


一、活動目的

サークルクラッシュ同好会って何してるんですか?」と聞かれることがよくある。その答えは、
サークルクラッシュ同好会は、ネタサークルであり、メタサークルであり、ベタサークルである」というものだ(以下、「サークルクラッシュ同好会」は基本的に「サー同」と略します)。
 具体的には、

 

ネタサークル

 イベントサークル。 「他のサークルをクラッシュする」だとか、「サークルクラッシュ同好会自体もサークルであるという矛盾」だとか、そういうものを活かしながらネタ的な活動をして楽しむ。ネット上のメディアなどでも注目を集めて宣伝効果を狙う。最後の仕上げとして自身のサークルをクラッシユし、有終の美を飾る。

 

メタサークル

 まじめな研究サークル。恋愛やコミュニケーション、ジェンダー、コミュニティなど、目の前にある人間関係の問題をテーマにしているので、それらの問題を俯瞰的な(メタ的な)視点から研究する。研究成果をホームページ上や会誌上で発表する。

 

ベタサークル

 居場所・自助グループとしてのサークル。他の集団になじめなかったり、人問関係や恋愛やコミュニケーションがうまくいかなったりといった「居場所がない」問題に解決する一種の安全基地としてサークルが存在する。一方で、メタ的な研究によって得られた知見も活かしつつ、それぞれが抱えた悩みなどに対して、話し合ったりトレーニングすることで、社会への適応などを目指す。

 

 

二、活動内容

 活動目的の「ネタ・メタ・べタ」で述べたように、基本的にはイ ベント/研究/居場所または自助が活動内容の三本柱になってくる。 その上で、まずメタ・べタの活動として、「『普段触れられない新しいもの』に触れること」が具体的な活動内容になってくる。
 その触れる対象は①人、②場所、③知識の三つに分類できる。
以下、その例を箇条書きで列挙する。

 

①人

 普段触れられない新しいものに触れるのに手っ取り早いのは人と交流することだ。交流は、「今すでに内部にいる人との交流」と「外部 の人との交流」とに分けて考えられる。

 

●内部の人との交流
・飲み会やカラオケなどの普通の交流
アンゲーム人狼、その他ボードゲームなどのコミュニケーションゲーム
インプロビゼーション(即興劇)ゃアイスブレイキングなどのワークショップ
当事者研究会(詳しくはググってください)
・悩みを相談し合う(自助グループ的活動)
・「愚痴」か「失敗談」か「恋バナ」を各自持ち寄って、一人一つ披露する会

 

●外部の人との交流
サークルクラッシュを体験した人や見た人から話を聞く。インタビューなどをしても面白い
・具体的に会ってみたい人の名前を出して呼んでみる。
 メンバーの交友関係の中で、面白いと思う人を呼べばいいかもしれない。


②場所

 行ったことがない場所に行ってみたい、でも一人で行くのは怖い、という人は多いと思われる。メンバーの中でその場所について詳しい人がいれば、その人に連れて行ってもらう「ツアー形式」で楽しむことができる。特殊な場所は調査して分析してみても面白いだろう。ただし、「怖いもの見たさ」で行くことによって現地の人に迷惑をかけてはいけない。礼儀をわきまえておくこと。

・映画館などの比較的ハードルの低い場所
文学フリマコミケなどの即売会
・アングラ寄りのイベント(例えば「メンヘラ展」)
・クラブなど、一人では行きづらいリア充的イベント
・ストリップショーなど、一人では行きづらい性的なもの
・オフ会
・宗教団体
・シェアハウス
・その他、特殊な地域や施設やコミュニティ

 

③知識

 サー同は心理学、社会学など、人文社会科学系の学問に強い人が一定数集まってくる傾向がある。また、恋愛ゃコミュニケーションなどについても一家言ある人は多い。普段自分の触れない分野について詳しい人から話を聞くのは楽しいものだ。



●読書会
・コミュニケーションスキルについての本などを読み、実際にお互いに実践しながら学んでみる。マナー、プレゼンテーション、「雑談力」、アサーションレジリエンス、カウンセリング、インタビュー、ディベート、演劇など
・自助活動として、自己啓発書や新書、自伝、漫画などで、ゆるい読書会をする(参加者で感想を共有するのが重要)
・堅い学術書を少しずつ読んでいく
・ネットに挙がってる論文やブログなどの文章を読む(Skype等でもできる)
・過去のサー同会誌を読む

 

●発表
・何かしらのテーマで誰かが発表をする(例えば、定例会では「フェミニズム」について発表・勉強会が開かれたことがある)
・3分講演会をする。各自が自分の好きな分野について、3分間のプレゼンをする。互いの興味分野を知ることができる

 

●映画鑑賞会
・恋愛などに関する映画を鑑賞し、感想を言い合う会

―――


 以上は、比較的受動的で、内部で閉じた活動だ。しかし、サー同は外部に対して開かれた団休であることが望ましい。
 以下では能動的に外部に働きかけていく活動を述べる。ここでネタサークルとしての性質が活きてくる。

 

④自分たちで新しい企画を生み出す

 サービスの受け手になるだけではなく、自分たちが送り手になることで得られるものもあるはずだ。また、メンバーで協力してーつのものを運営することは、団体の結束感を高める効果もあるだろう。

 

●ベタにできそうなもの
・会誌を発行する(既に関西・関東は合同でやっている)
・女装/男装会や、オタサーの姫/クラッシャーコスプレ会を開く
・大学生向けの合コンを企画する
・サークルの人間関係に関するお悩み相談メールを受け付け、回答をネット上に公開したり、コンサルティングしたりする
・男女の恋愛などに詳しい人を呼び、講演会を開く

 

●ネタとしては
・「自己啓発セミナー」を開く
・サー同内でサークルクラッシャーを養成し他のサークルに送り込んでクラッシュする。クラッシュによって得られたデータはフィールドワーク資料として研究に活かされる
↑クラッシャられを養成して送り込んでクラッシュされてもよい

 


 以上の活動は、月1回や月2回、あるいは余力があれば週1回集まる「定例会」ができるとやりやすい。一応付け加えておくと、定例会では毎回のように新しい人が来ていたため、「毎回、自己紹介をちゃんとやること」と「新しい人が来ていたら常連の会員はその人に配慮してちゃんとコミュニケーションを取ること(“歓迎”をすること)」とを重視してきた。

 


三、Webの整備・人の集め方・定例会の場所の決め方

 今の時代、サークルを運営するならばWebの整備は欠かせない。ネタサークルとして外部発信するサー同としてはなおさらだ。具体的に必要になってくるものはだいたい次のものだろう。今の時代、もはやメーリングリストは古いのかもしれないが。

 

●メーリソグリスト
●LINEグループ
●公式メールアドレス
●公式ツイッターアカウント
●公式ブログ
●その他SNS への登録(ガクサー、つなげーとなど)

 

 次に、人の集め方について。「サークルクラッシュ」を扱っているので、大学を拠点にするのが理想的だ。どこかの大学を拠点にしつつ、 ツイッター上などで宣伝することで人を集めると良いだろう。ただし、メンバーは必ずしも大学生に限定する必要はない。社会人も参加できる方が多様性が出て良いだろう。
 また、活動内容で述べたようなイベントや定例会がある。それらも 外部に開き、日付や場所をツイッターなどで告知すると更に新たな人が入ってきやすくなるだろう。
 もし、大学内でビラを撤いたり新歓ができるならば、それはぜひ活用すべきだ。面白いビラを作り、面白い新歓をすることもまたネタサークル活動としての一環である。


 次に場所の決め方について。大学を拠点に活動するのならば、その大学で教室などを借りられると理想的である。もし、そういう場所がない場合、公民館などを借りるのが次善だろう。人が少ない場合は、誰かの家やファミレスなどを使ってもいいかもしれない。いずれにせよ「定例会」として定期的に開くことが組織の存続には重要である。

 

四、サークルクラッシュ同好会のあゆみ

 最後に、実際に私が作った「サークルクラッシュ同好会」がどのように活動してきたか、「年表」のようなものを記しておこうと思う。思えばうまくいかないこともいっぱいあったし、今もそこまでうまくいってないのかもしれない。しかし、だからこそ今後の《サークルクラッシュ同好会》の発展のためにも、一度これまでの歩みを振り返っておこう

 

サークルクラッシュ同好会年表
●2012年
2月 「自分はサークルクラッシャーだった」と語る女性が@holysenのTL上に現れる
3月 サークルクラッシュ同好会結成。ツイッターアカウント開設
4月 新歓ビラロードでビラ配り「サークルクラッシュにご注意ください!」と啓発
新歓期に3、4人が入会
5月 ホームページ開設
11月 会誌第一号を京都大学11月祭(NF)で頒布。シェアハウス界隈や幸福の科学の人から寄稿いただいた
12月 第一号をコミックマーケット83(C83)で頒布

 

●2013年
4月 新歓。10人以上が入会。
5月 初の定例会。徐々に自助グループ的な色合いを帯びていく
サークルクラッシュ同好会関東支部結成
8月 関東支部、初の定例会
10月 関東支部、崩壊(クラッシュ)
11月 会誌第二号を京都精華大学キノフェア2、第十七回文学フリマ、NFで頒布。
12月 第二号をC85で頒布

 

●2014年
4月 新歓。「面白法人カヤック」の「学生新歓コンテスト」に出場。「サークルコンサルティング」、「ダミーサークル」などの奇抜な新歓戦略を展開
5月 定例会で「サークラ人狼」を実施
6月 定例会で「アイスブレーキング」、「映画『モテキ』鑑賞会」を実施。「服を買いに行く会」実施。ブログ開設
7月 定例会で「ジェンダー論勉強会」を実施
8月 会誌2.5号をC86で頒布
9月 2.5号を第二回文学フリマ大阪で頒布
サークラ合宿」実施。和歌山の白浜へ
11月 2.5号をキノフェア3で頒布
会誌第三号をNF、第十九回文学フリマで頒布。NFで「ビンタ屋」実施
12月 定例会で「女装会」を実施
12月 第三号をC87で頒布

 

●2015年
2月 「映画『愛のむきだし』鑑賞会」を実施
4月 オープンシェアハウス「サクラ荘」開始(当初は「サークラハウス」という名称だった)。
5月 「面白法人カヤック」の「第2回学生新歓コンテスト」に出場。新歓にて「自己啓発セミナー」を実施。実際の中身は「誰でも当事者研究会」。以後、定例会でも頻繁に「誰でも当事者研究会」が開かれる
「ゴッフマン『行為と演技』読書会」開始(途中でポシャる)
6月 定例会でコミュニケーションゲーム「アンゲーム」を実施
7月 「精神分析読書会」実施
8月 会誌3.5号をC88で頒布
9月 「サークラ百物語」実施。会誌3.5号を第三回文学フリマ大阪で頒布
11月 3.5号をキノフェア4で頒布。会誌第四号をNFで頒布。「ビンタ屋」実施
12月 第四号をC89で頒布。

 

●2016年
2月 サークルクラッシュ同好会関東支部結成(2013年のものとは別物)
3月 「代々木忠監督のAV作品鑑賞会」を実施。関東支部で「インプロ・ワークショップ(即興劇)」実施
4月 新歓。「意識高い系サークルの新歓に潜入する会」実施。関東支部フロイト読書会」開始(8月に終了)。
5月 「自己啓発セミナー」を実施(二年目)。第四号を第二十二回文学フリマ東京で頒布
「映画『愛の渦』、『恋の渦』、『恋の罪』」連続鑑賞会実施(3週に分けて)
6月 「映画『桐島、部活辞めるってよ』」鑑賞会実施。関東支部で「ゲーム会」実施
7月 「服を買いに行く会」実施。
「偏ったブログをぱらぱら読む会」実施:ぱぷりこ氏の「妖怪男ウォッチ」を読む
8月 「第一回ゆるふわ読書会」実施:『セックス神話解体新書』を読む
幸福の科学大学オープンキャンパスに行く会」 「天理市に行く会」
9月 「バーベキュー」実施。「第二回ゆるふわ読書会」実施:『孤独と不安のレッスン』を読む。「Skype読書会」開始(ほぼ週一で開かれ、10月末に停止)。関東支部で「服を買いに行く会」実施
10月 「サイゼリヤ飲み会」実施。「オタサーの姫コレクション」実施。関東支部で「ハロウィンを楽しむ」実施

 

次のサークルクラッシュ同好会を作るのは君だ!
(完)