サークルクラッシュ同好会へのご指摘について
サークルクラッシュ同好会が2013~16年頃までの間に京都大学の中で配布しておりましたビラ、ならびにホームページやTwitter上での表現に不適切な内容があることをご指摘いただきました。
これらのビラや表現は直接的には2012~14年に作られたものであり、当会の現役会員で製作に関わった人間は(この記事の文責である)ホリィ・センを除き、存在しません。
サークルクラッシュ同好会には様々な思想やスタンスを持った人が入ってきます。実際、(末尾の***で具体的に述べますが)当会の例会は様々な立場から開かれ、毎年発行している会誌は様々な立場から書かれています。
そのような相互批判的な対話の土壌が築かれていったからこそ、過去の会員やホリィ・センが製作したビラや表現に不適切な内容があるという声も上がりました。その結果、サークルクラッシュ同好会としては2017年頃からはそのようなビラの配布を停止しておりました。
しかし、2020年1月現在、なおも大学内の一部に不適切な内容のビラが残存していたり、不適切な内容の表現がインターネット上にアップロードされたままであったりしたために、正当にも外部の方からご指摘をいただきました。
この問題が放置されていたのは、ビラの配布や、ホームページ・Twitterアカウントなどの運営のほとんどの部分をホリィ・センが独占していたことが一つの大きな原因です。
また、本来ならばビラの配布を停止したその時点で、ビラや表現の作成に責任のある者(主にホリィ・セン)が謝罪をすべきでしたが、この記事以前には謝罪はなされてきませんでした。
まずは僕が問題を放置していたことを謝罪します。申し訳ございませんでした。
不適切なビラや表現の有害な効果を鑑みて、
- 京都大学内に残存している不適切なビラの撤去
- Twitter上・ホームページ上に残存している不適切な表現の削除
- ホームページ上に残存している一部文章における、差別的だと受け取られかねない表現に対する注釈
- ビラや表現によって精神的な苦痛を負った方への個別の謝罪
に、ホリィ・センをはじめとした同好会内の一部有志*で、できるかぎり取り組んでいきたいと思います。
また、今後作成するビラについては、作成前と配布前に不適切な表現がないか、会内でのチェックをおこなうこととします。
*:ここで、「一部有志」としている理由を書いておきます。上で述べたように、会内には様々な立場の人がいる上に、過去のビラや表現について現役会員で直接的な責任を負っているのはホリィ・センだけです。そのため、同好会全体の立場を代表するような対応(比喩的に言えば、企業や政党のような対応)はしたくてもできないからです(また、代表すべきでもないと思います)。
よって、本記事の内容もまた、サークルクラッシュ同好会全体を代表するものではなく、文責のホリィ・センをはじめとした同好会内の一部有志によるものだということをあらかじめご了承願います。
今回の件を受けて、サークルクラッシュ同好会の例会ならびにLINEグループ上において話し合いを行いました。話し合いにおいてビラ等の問題性を確認した上で、今回の記事を書くことに決定しました。
ここからは、過去の過ちを繰り返さないためにも、当会の過去のビラや表現の内容がどのように不適切であったかを具体的に述べた上で、個別の観点ごとに謝罪していきたいと思います。
ただ、謝罪に入る前に、申し上げておきたいことがあります。
今回、ビラや表現の不適切性についてご指摘いただいた方々はこの社会や大学における性差別的な構造に対する問題意識を持っている方々だとお見受けしております。
サークルクラッシュ同好会も同じく、観点や意見は異なるかもしれませんが、性差別的な構造に対して問題意識を持っているつもりです。
そのため、共通する問題意識について、今後、可能な限り対話していけたらと考えております(対話しないという選択肢を取っていただいてももちろん大丈夫です)。
そして、この記事を読んでいる方にお願いがあります。
当会に対してご指摘いただいた内容を以下で引用していきますが、それらのご指摘をされた方々やそれに類する方々に対する誹謗中傷を含むコメント・書き込み等をお控えいただきたいです。
そのようなコメント・書き込み等によって、共通の問題意識を持っている方々とのせっかくの対話の機会が失われ、溝ができてしまうことを強く危惧しております。たとえ当会を擁護しているような内容であっても、結果的に分断を生むようなコメント・書き込み等は望んでおりません。
ただ、攻撃的ではない範囲での感想・意見等をいただくのは構いませんし、歓迎します。
さて、それでは、当会のビラや表現の内容がどのように不適切であったかを具体的に述べてそれぞれ謝罪したうえで、ご指摘いただいた内容に個別に謝罪していきたいと思います。
ビラその1について
このビラは2013年に初めて配布・掲示し、同様の内容のビラを2016年頃まで配布・掲示しておりました。このビラの上部には「狭いコミュニティでその気はなくとも次々と男を喰い荒し そのコミュニティの人間関係を壊滅させる系女子の特徴」と白抜き文字かつ扇情的なフォントで書かれています。真ん中には女性として描かれた絵と、その絵についての特徴やセリフが書かれています。そして、下部にはサークルクラッシュ同好会の活動と説明会についての情報が書かれています。
以上の内容を見た上で、3点の問題点を指摘できると思います。
個人レベルの問題点
ビラの絵や記述に自分が当てはまると認識し、このビラによって告発されているとその人自身が感じることで、精神的な苦痛を負ってしまう点。
関係レベルの問題点
ビラの絵や記述に当てはまると周囲から認識された人が、ビラの絵や記述に基づいて不適切なレッテル貼りを受けることで、精神的な苦痛を負ったり関係性に困難をおぼえたりしてしまう点。
規範レベルの問題点
直接的にはこのビラに基づいた被害が発生しなかったとしても、「ビラに描かれているような人物については非難してよい」という規範(価値観)の形成に(累積的に)寄与してしまう可能性がある。そしてそのことが間接的なかたちでビラに描かれているような人物への被害に繋がりうる点。
以上三つの問題点があったことを謝罪します。申し訳ありません。
また、後にも触れますが、実際に京大の中でこのビラによって傷ついた方がいるということを伺っております。本当に申し訳ありません。
可能であれば個別にも謝罪したいと思いますので、個別で謝罪を受けたいという方がいらっしゃいましたらご連絡いただけると幸いです。
ビラその2について
このビラは2014年から 2016年頃まで配布・掲示しておりました。このビラには「卒業後日本を背負って立つ君たちが女の尻を追いかけていられるのも今のうち」という文言があります。
この文言には大きく二つの問題点があると思います。「男女はこうあるべき」という男女観といわゆる「恋愛至上主義」のような価値観を再生産してしまうことです。
「男女はこうあるべき」という男女観について
「女の尻を追いかけ」るという表現は「男性は性的主体/女性は性的客体」という古典的な異性愛主義に基づいていると言えます。よって、そのような価値観を息苦しく感じる人にとっては不快でしょう。また、欲望される男性、欲望する女性、非異性愛者、男性でも女性でもない人、などの存在が排除されてしまっていることも問題です。
また、「女の尻」という表現から女性を特定の身体部位に切り詰め、その人格性を否定していることになります。
更に、「女の尻を追いかけ」る主語が「卒業後日本を背負って立つ君たち」であることから、京大生はエリートであるという価値観に基づきながら、その主体が男性に限定されてしまっています。つまり、女性は出世しなくていいという価値観が前提されています。
以上のような不適切な価値観を再生産してしまうことは問題です。
「恋愛至上主義」について
「女の尻を追いかけていられるのも今のうち」という表現は(その後の「学部生のうちに死ぬほど振られろ」なども含めて)、恋愛を「早いうちにしなければならないもの」として規定していると言えます。
これは、物事をなんでもかんでも恋愛に結びつけられたくない(すぐ恋愛の話をする社会が嫌いな)人や、アセクシャルなどのような恋愛感情を持たない人にとっては息苦しい価値観だと思います。よってこのような価値観を再生産することも問題です。
以上二つの問題点があったことを謝罪します。申し訳ありません。
ビラその3について
このビラは2014~15年頃に掲示しておりました。目線が隠された女性の写真と、その左に「おねえさんと、ランチしよ♡」と書かれています。また、最下部には小さく「規約を守らないと出禁にする/通報する」といった内容の文言が書かれています。
これも「ビラその2」と同様に、女性の目線が隠されていることから、広告にありがちな「顔のない女性」として、女性の人格性を否定しているものです。また、「女性は性的客体」という価値観を再生産しています。
そして、丸文字のフォントと、最下部の「規約を守らないと出禁にする/通報する」といった内容の文言と、目線の隠された女性のセットから、このビラが性風俗広告のパロディであることが読み取れます。そのようなパロディが行われているこのビラを見て、セックスワークの従事者の中には不快に思う人がいることと思います。
以上の問題点があったことを謝罪します。申し訳ありません。
「サークルクラッシャー」にまつわる表現について
サークルクラッシュ同好会という名前にもある「サークルクラッシュ」は、元々「サークルクラッシャー」という言葉が起源です。しかし、「サークルクラッシャー」という“人”に焦点をあてた言葉を用いると、特定の個人に責任を押し付けてしまうという問題に繋がりやすいため、「サークルクラッシュ」という“現象”に焦点をあてた言葉を用いることを当会では推奨してきました。
しかし、ホームページ上に残っていた2012~3年の文章では、集団内の恋愛トラブルの責任を「サークルクラッシャー」と名指された女性に押し付けるような表現や、悪意が読み取れるかたちでそのような女性の特徴を挙げている箇所がありました。
そのため、「ビラその1」と同様に、「サークルクラッシャー」という言葉によって女性に責任を押し付けることを容認してしまうという規範レベルの問題点と、「サークルクラッシャー」とみなされた女性が実際に傷ついたり関係性に困難をおぼえたりするという個人レベル・関係レベルの問題点があると考えられます。
ホームページ上に残っていた文章に、以上の問題点があったことを謝罪します。申し訳ありません。
ここまでビラや表現がどのように不適切であるかを述べてきました。
そして、これらのビラや文章の作成も、男性である僕が中心となっておこなってきたものです。
つまり、ジェンダーにおいて優位な立場にある僕が劣位な立場に置かれてしまっている女性を貶めていることがより問題です。社会や集団における自らの立場性を自覚できるよう努めていきたいと思います。申し訳ありません。
次に、ご指摘いただいた内容に個別に謝罪します。
ファリードやす様のご指摘
ファリードやす様は「サークルクラッシャー」という言葉を不用意に使うことの問題と、サークルクラッシュ同好会が性差別的な文化に寄与しているということの問題を「ビラその1」の画像と共に指摘されています。
上で述べましたように、ホームページ上には「サークルクラッシャー」という語を女性に責任を押し付けるかたちで用いてしまっている文章が残っていました。また、ビラの内容には、「ビラその1」で述べた規範レベルの問題、「ビラその2」で述べた「男女はこうあるべき」という男女観の再生産の問題などがありました。
そのため、文章やビラに関してはおっしゃるとおりだと思いますし、これからもこのような問題が起こらないように努めていきたいと思います。申し訳ありませんでした。
ただし、サークルクラッシュ同好会が「インセル系**の思想」を持ったサークルである、ということについては申し上げたいことがあります。ビラの内容などからそのように判断されたのかもしれませんが、同好会の会誌や活動の内容***を根拠に、そのことははっきりと否定しておきたいと思います。
**:「インセル」とは恋愛やセックスのパートナーを持つことができず、自身に性的な経験がない原因は相手の側にあると考える人のことを意味し、典型的には異性愛者の男性を指します。詳しくはWikipediaの「インセル」を参照。
ひびのまこと様のご指摘
ひびのまこと様は
①ビラの内容の性差別性
②実際に京大女子が「紅一点」として有徴化され、ラベルを貼られる・少数派として説明役割を負わされているという状況において、「サークルクラッシャー」という言葉が暴力として機能している点
③サークルクラッシュ同好会がジェンダー的に中立であることを装いながら男性中心主義を実践することによって、女性差別を不可視化している点(ひいては、ジェンダー概念の盗用)
の三つの内容を指摘されているように思います。
①について、上で述べたように、おっしゃるとおり差別的と言える表現が含まれております。
②について、「サークルクラッシャー」にまつわる表現について のところで述べたように、「サークルクラッシャー」という言葉によって女性に責任を押し付けることを容認してしまうという規範レベルの問題点と、「サークルクラッシャー」とみなされた女性が実際に傷ついたり関係性に困難をおぼえたりするという個人レベル・関係レベルの問題点がありますので、おっしゃるとおりだと思います。
2012~14年頃に作られたビラや表現に、①②のようなご指摘は当てはまります。これからもこのような問題が起きないよう努めます。申し訳ありませんでした。
ただし、③については申し上げたいことがあります。
確かに、当会のかつてのビラや表現を「男性中心主義の実践」と言うことが可能なことについては同意します。
しかし、サークルクラッシュ同好会は、メンバーの多様性や日々の活動の中で、相互批判的な対話が行われているからこそ、過去のビラや表現の問題も会内で指摘され、配布が停止されました。
よって、「サークルクラッシュ同好会が男性中心主義を実践しつつ、ジェンダー的に中立であることを装っている」ということについては、同好会の会誌や活動の内容***を根拠に、そうとは言いきれないと言っておきます。
ななみん様のご指摘
ななみん様は上記のお二人と同様の指摘に加えて、「ビラを見て実際に傷ついた人がいる」ということを指摘していらっしゃいます。
これは、「ビラその1」のところで確認しましたように、個人レベル・関係レベルでの問題が実際に起きたのだと思います。
しかも、僕は数年にわたって問題を放置してきました。僕がもっと早く対処していれば、傷つかないで済んだ人がもっといたことと思います。ビラや表現の撤去・削除については迅速におこないます。申し訳ありませんでした。
そして、傷ついたという方におかれましては、個別に謝罪したいと考えています。ななみん様から見て、ご友人に連絡されるのが適切であればご連絡いただくか、そのご友人の連絡先をお教えいただければ幸いです(センシティブな問題ですので、「連絡はできない」ということでしたらそれでも大丈夫です)。
まとめ
サークルクラッシュ同好会で2012~14年に作られたビラや表現は不適切なものでした。そのため、同好会内でも批判の声があがり、配布は停止されていました。
しかし、問題への対処が不十分でしたので、ビラや表現は残っていました。今回、ご指摘いただいたことによって問題は表面化しました。
当時のビラや文章の作成について現役会員で直接的な責任を負っているのはホリィ・センだけですので、不適切なビラや表現によって生じた問題の補償となる対応(削除や謝罪など)はホリィ・センをはじめとした一部有志で行いたいと思います。
また、今後同じ過ちを繰り返さないためにも、ビラや表現の問題性を確認しました。
そして、今回、ビラや表現の不適切性をご指摘いただいた方々は、性差別的な構造に対する問題意識を(観点や意見は違うかもしれませんが)持っているという点で「共闘」できる可能性があると信じています。だからこそ、個別に応答させていただきました。(紙幅の都合上この記事上で応答できなかった方についても可能な限り、対話していけたらと思っております(対話しないという選択肢を取っていただいてももちろん大丈夫です)。)
最後にもう一度、僕個人の気持ちを書いておきます。当同好会のビラ等にご指摘をされた方々やそれに類する方々に対して、誹謗中傷を含むコメント・書き込み等をするのはお控えください。
意見を封殺したいのではありません。感想・意見等、お待ちしております。僕はただ、Twitter上で日々感じる分断に、嫌気が差しているのです。
***:最初に書きましたように、サークルクラッシュ同好会の中には様々な思想やスタンスがあります。その中で、旧来のジェンダー規範を批判するような活動は連綿と存在しております。
具体的に書きます。近年の会誌で言えば、
6.5号の「「女の腐ったような奴」の当事者研究」(雪原まりも)は異性装を主題とすることでジェンダー規範に対する自身のあり方を脱構築/再構築していく試みと言えます。
7号の「すぐ恋愛の話をする社会が嫌い」(複素数太郎)は、性愛中心主義の押し付けについて疑義を呈しています。
8号の「「サークラ女子会」名称批判 座談会」(無花果)では同好会内での周縁的な立場の人々の座談会を通じて、男女の性役割の問題への言及や、同好会の運営体制が男性中心主義的ではないかという疑問が呈されています。
例会の活動でもフェミニズムやジェンダーを明確に主題とした勉強会も何度か開かれています。一例として2017年に開かれた会のレジュメの一部を貼っておきましょう。
その他、会員有志による読書会でも『セックス神話解体新書』(小倉千加子)や『ジェンダー・トラブル』(ジュディス・バトラー)のような、既存のジェンダー規範を問い直す内容のものが選ばれています。