たまたま金沢に行った際に、展示「インストール インストール RE: / 主体性の輪郭」に行った感想

10月の最初の方、たまたま誘われて金沢に行っていた。それで「インストール インストール RE: / 主体性の輪郭」という展示に行ってきた。

 

展示している主のNanageo/さんのホームページに展示の感じや情報(ステイトメントとか)が載っている→ http://naganeo.com

 

だいたい以下のような内容だった。

 

①人間のアイデンティティについて考えさせられるような不思議な展示
心の哲学」系の思考実験で提起されるような問いを心理学風の質問紙で問う
③質問紙をもとにNaganeoさんが録音しながらカウンセリングする
④カウンセリングを終えた人の写真を撮って加工したもの、質問紙、録音されたテープを「被験者」として展示

 

被験者の僕。アイロニカルだと言われた。


僕は心の哲学も心理学も好きなので、こういう学問をパロディした内容はたまらない。カウンセリングを対面ではなく90度の角度でやるとかも良いパロディ。


心の哲学とかで提起されている問いを僕はある程度知ってしまっているので、けっこうメタ的な視点から回答してしまったなぁ。そういうのをかじっていない人からはこれらの内容がどう映ったのかが気になる。他の人の質問紙も見れるんだけど、それぞれに個性が見られてなかなか面白かった。
しかしまあ、学問オタクへの道を進みつつある僕にとっては、こういう学問を援用するタイプの芸術はもっと増えてほしいなあと思うのでした。

 

それにしても、カウンセリングをNaganeo/さんのようなハンサムな人にやってもらうのはドキドキした。Naganeo/さんは質問紙の問いについて「答えはない」ということを強調していた。それは複数の学問がコラージュされたこの展示においては、あたかも学問分野間の調停しきれない対立を表しているように(僕には)見えた。

 

人文社会科学と自然科学(いわゆる文系・理系)の間には人間の捉え方にミゾがある。人文社会科学の中でもいろんな対立がある(社会学をやっている僕としては、「あなたはどこにいますか?」というような問いに対して「周りとの関係」というような答えがあり、ついついマルをつけてしまった)。
しかし、それぞれの学問分野disciplineのレンズを通して見る「わたし」(主体性)は、展示のタイトルにもあるように輪郭のような形で浮かび上がってくるだろう。統一された全体ではなく、ぼんやりと。学問というレンズだけでなく、芸術というレンズ、展示というレンズ、質問紙というレンズ、カウンセリングというレンズ、録音テープというレンズ、写真というレンズ、あるいは展示に来た人々それぞれが持っているレンズを通して。