『ネットは社会を分断しない』(角川新書)まとめ

面白かったので雑に要約しました。Twitterとか使う人はぜひ読んでほしい。

 

 

ネットは社会を分断しない (角川新書)

ネットは社会を分断しない (角川新書)

 

 

1章:ネットにみんな希望抱いていたけど、幻滅してきてる
→保守派/リベラル派の分断が起こってるっぽい。分断が強まりすぎると相互の対話ができなくなるので、民主主義の危機である

 

2章:「社会の分断の原因はネット」説の紹介
①情報を見る側は、「選択的接触」をする(見たいものだけを見て、見たくないものは見ない)
特に、ネットではそれが強くなる(フィルターバブル、エコーチェンバー)

②情報を発信する側が増えた(パーソナルメディア化)
世間の意見は中道が多い山型の分布をしているので、情報発信者が少ない場合は、顧客獲得のために中道にならざるを得ない。マスメディアは寡占状態で、参入する者が少なかった。
→しかし、ネットの発達により個人が発信できるようになり、メディアが増えた(メディアのパーソナル化)。パーソナルメディアでは参入コストが低いので、少数な過激な人を顧客(ターゲット)にしても十分やっていける。
→よって、過激なメディアが発達する。

以上より、「ネットは社会を分断する」というのが定説。
実際、ネット利用と意見の分極化(保守に強く偏っているorリベラルに強く偏っている)には相関がある。

 

3章:ネットを使わないはずの高齢者の方が過激
10万人規模の調査をしたところ、
①若者より高齢者(60代以上とか)の方が過激(リベラルまたは保守への意見の偏りが大きい)。
②女性よりも男性の方が過激。

若者の方がネットをよく使うので、①は2章までの議論と矛盾している。なぜか。
→因果関係が逆だからでは。
「ネット利用が意見を過激化させる」のではなく、「過激な意見を持った人、すなわちなんらかの発信をしたい人がネットメディアを利用するのを好む」という因果関係ではないか。

 

4章:2時点調査で、ネットの利用を開始した人を調査
①全体としては過激化していない
②若い人や女性はむしろ、ネット利用(ブログを見る)を通じて穏健化している
③最初からとても過激な人(端にいる2割の人たち)はTwitterを利用すると、より過激化する傾向は一応見られる

 

5章:保守派の人がリベラルな発信者に触れる/リベラル派の人が保守派の発信者に触れる割合(クロス接触率)は意外と高い
TwitterFacebookではクロス接触率4割。マスメディアとか紙媒体とかと比べてもこれはむしろ高いぐらい
・(当たり前だが)過激になればなるほど、クロス接触率は下がる
・両方の意見に触れると穏健化するという実験結果もある

2章の話と逆の結果になっている理由は何か?
①ネットでは「選択的接触」が起こるということだったが、(マスメディアと比べて)複数のメディアに触れるコストも低くなるために、多様なメディアに触れていると考えられる
②ネットでは一部の人の声がデカく見えるから、それをそのまま受け取ると2章のような話になってしまう

 

6章:ネットは罵倒と中傷ばかりに見えるのはなぜか
「人々の政治的態度」ベースでは偏っていない。むしろ中央に多く分布している。
しかし、ネット上の「書き込み総数」ベースで見ると偏っている。
なぜなら、ネットでは発信したい意見を持っているごく一部の人が何度も書き込むということが起こっているから(ヘビーライター)。
例えば、憲法9条の問題について、総書き込み数の半分は0.23%の人が書き込んだもの。

閲覧頻度から言っても、よく書き込む人のものがよく読まれる。

しかも、両極端の強い意見が目立っていることで、穏健派は書き込みを萎縮するようになる。

よって、ネットの書き込みは、真ん中の方にいるサイレントマジョリティたちの声を代表していない。